謎が謎を呼ぶ謎の外国人、イアン。彼が日本滞在時に収集したナードコアムーブメントの様々な資料が、『イアンのナードコア大百科』として編纂された。僕も以前から手に入れてはいたのだが、このブログには未だに「ナードコア」で検索してやってくる人が多いようなので、遅ればせながらのお祝いを兼ねて、一応インフォメーション。本の中身と入手方法、それから「記録されにくい文化を誰が残すのか」という話を書く。
『イアンのナードコア大百科』とはどんな本か
アメリカ人のイアンが、日本滞在中に収集したナードコア関連の音源・資料を網羅した一冊だ。個人的にはゲンロンカフェの「ナードコア・ムーブメントとはなんだったのか」のときに在庫切れを起こしていたので、後日、埼玉はサイボクハムにて行われたイアン送別会のときに入手した。
とにかく、分厚くてやばい。凶器になる。頭おかしい。というのが、ゴールデンポーク&アルコール入りの感想だ。
現在はオンデマンド版がBandcamp(ALLKORE)やDISK UNIONで入手できる。在庫や再販の状況は各ストアで確認してほしい。
【追記】その後2022年7月、著者イアン本人の手で、デジタル版がInternet Archiveにて無料公開された。Internet Archiveが出版社側と法的に争っていた時期に、連帯を表明してのフリー化だという。なお書籍版は右開きだったがデジタル版は左開きに直されているので、見開きの感覚は少し変わる。紙の凶器が欲しい人は、引き続き上記ストアで。
ナードコアとは
ナードコアとは、1990年代後半の日本で生まれた、アニメ・ゲーム・お笑い番組などの音源をサンプリングしたハードコアテクノを中心とする音楽ムーブメントだ。同人即売会やクラブの現場、CD-Rといった少部数の媒体が主戦場だったから、公式な記録はほとんど残っていない。だからこそ「大百科」としてまとめられたことに意味がある。
ちなみにこのブログで現在一番アクセスされているのが、この昔話だ: ナードコア周辺言説についてひとこと言っておくか
今読むと、酔いが冷めてきたからちょっと書いてみた、という空気感があるけど、まあ今更推敲する必要もなかろう。
なんでこのアメリカンはドリフを知ってんの?
なぜこの本がアメリカ人によって書かれたの?という疑問を普通は抱くと思うんだけど、それ以前に、なんでこのアメリカンはドリフを知ってんの? ドリフDVDBOX付録のハッピをなんで全種もってるの? とか、そういうパーソナリティのインパクトのほうが強いんだよね、イアン。
だって、DVDボックス一つに付き、5種類あるハッピのうちどれか1つしか入ってないんだぜ。
それにしても、今回感服したのはこの情報量と網羅性だよね。奨学金もらって院生とかになって、研究者としてやってくれよ。エロゲ会社の広報しながらじゃなく。
ダンスミュージック好きな御仁であれば、Discogsのカタログ情報にはお世話になっていると思う。なんか自分らがCDをリリースするたびに、そこのカタログがすごい速度で整理されていく…。だれなんだこのSpeedBeatzっていうイカれたユーザーは!ってずっと思ってたんだけど、イアンに「いやそれ僕」って言われて、長年の疑問が解消されたり。
データを残すということ
吉田豪氏がラジオ番組「アフター6ジャンクション」でナードコア大百科を紹介した書き起こしを見つけたのだが、後半にある「データを残す重要性」については本当に同意できる。ネット上に残っている情報は、ホント少ない。
イアンみたいにDiscogsとかに現世の情報を登録しまくってる人に資料本を書いてもらったほうが、後世にとってほんといいよね。ネットにない情報を編纂していく人って、重要だ。
話は逸れるが、ナードコアは20年前後くらい前の動きだけど、ここ10年くらいだと、ニコ生のユーザー生まわりの情報もほとんどまとまってない。当時、全日社長と情報交換してたんだけど、YouTubeやる前のヒカキンとか、現N国議員のAV男優兼監督の人とか、面白い事象が沢山あった。でも、ニッチかつハイコンテクストなくせに広大すぎて、どうにも伝えようがない。
刊行に寄せて
こんどはナードコア大百科片手に、記憶は正しかったのか検証してみようかな。酒飲みながら。
いや、イアンがいてくれて、俺ら運がいいよなあ。